不登校ひきこもり 思春期ブルー相談室ブログ

家族支援カウンセラー海野しぶきによる不登校・ひきこもりの解説と、わが家の話


NHKひきこもりの特集番組から親子の会話を考える

ハートネットTVの「長期・高齢化するひきこもり」から母と息子の会話

私が録画して見た番組は2019年8月20日放送の「ひきこもり新時代2019 第1回「長期化、募る焦り」という番組でした。
この番組は2018年8月22日放送の番組を再構築したもののようです。

番組の詳しい内容を知りたい方は、こちらのページで確認してみてください。
長期・高齢化するひきこもり その実態と解決のヒントとは - 記事 | NHK ハートネット


番組を見て、ひきこもり当事者の男性(30代)とその母親(60代)の会話がとても印象的だったので、あとから上記のサイトを見たところ、私が気になったその会話の部分は、
「お互いの思いをぶつけ合ううちに、」
の一文で終わっていました😅
ほかの部分は細かく書いてあるのに…。

なので、ちょっと頑張って文字起こししてみました。

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まずは親子の概要から。

この男性はひきこもり歴13~14年の30代後半。
60代後半の母親と二人暮らしで、父親を亡くして1年経ち、経済的な不安から現状を変えるべく治療を開始し、ひきこもり支援団体ともつながりを持ち始めたところです。

男性は、医師の書いた本にある、親へのすすめとして掲げられている内容を母親に伝え、この方針に従ってほしいと伝えていますが、取り合ってもらえないとのことです。

医師のすすめとは、この3点です。
○安心感を与える
○本人に家計を開示し将来設計を立てる
○月々定額の小遣いを渡す


母親は、亡くなったご主人がひきこもりの本人とは関わらないという方針だったため、自分もそれを継承。
「ただ健康を害さないように彼の身の回り、食生活を考えていただけ」
とのこと。


以下がその男性と母親の対話です。


男性「そのぉ、基本的な考え方が違うように感じる。
だから私としては将来の話もしたいなと。
財産の話とかちゃんと打ち明けると。
それをしないで養い続けるっていうのは子ども扱いと同じ…」

母親「財産?」

男性「そう。財産や家計の管理の話をちゃんと…」

母親「だからそれは、毎月生きていくのは私の年金のみだから。
それがよく分かってないかな?」

男性「ないないって言いながら…」

母親「言いながら何ですか?」

男性「家計の明細を見せてくれないから。」

母親「金銭的な管理とか、そういうのはまだできる年代、私が。でしょ?
そういう感覚をこの年代から取ってしまったら私は明日にでも認知症になってしまいますよ、っていうこともちゃーんと頭に入れないと。」

男性「打ち明けるっていうことは、息子に采配を任せろ、ということではない。
(インタビュアーに向かって)たぶん、治療の基本的な指針を共有してくれてない気がするんです。
母自身の変化が私の回復にとって鍵になってるんだという考えはあまりないみたい。
本とかもちゃんと読んでほしいって思ってるんですけどね。

母親「あの、タイム、時間がないの私には。
いろんなこと、自分の犠牲にしたものいっぱいあって、それで今こうやって生きてるわけでしょう。
で、こういう年代になったら本来だったらば丸一日あるのが一日ではないの。
半日しかないんですよ、行動力、気力、やることが。
本は置いてってくれますよ、リビングに。
でも私には読む時間がないの。
読むよりもボケっとひとりでしてる時間が私にはとっても貴重なの。」

男性「ただ、母さん自身が、 そのぉひきこもって長い間、俺がどういう状態だったかっていうのをそんなに見てくれてなかったと思う…」

母親「えっ!」

男性「これからの…」

母親「いやそんな、ちょっと待って。」

男性「対処の仕方をちょっと改めてもらいたい。」

母親「あなたさ、『何もしてもらってない』『俺を見てなかった』?
冗談じゃありませんよ。
口には出さねど見てましたよ。
いちいちあなたの部屋をお訪ねして、ああでもないこうでもないって口に出さなかっただけよ。
そういう変化というのは常時見ていたでしょう、当たり前でしょう。
…だから争いになる、ダメです。
でも、もしそれがあなた自身の治療の妨げになるとしたらば、いっときでも別枠で暮らしてみましょうか。
一人で暮らしてみたら、もしかしたら私という呪縛から離れて解放されて生きていけるかもよ。」

男性「つまり放り出されたくなかったら、母の言うことを全面的に受け入れろっていうことですよね。」

母親「そんなこと言ってないでしょ、ばかね。」

男性「そうやって脅すわけでしょ。
(インタビュアーに向けて)必要な治療への協力をするっていうポーズは母はとるんです。
でもじゃあこういうことを言うと、『だったら出てけ』っていう話になる…。」

母親「そんなこと言ってない。じゃ質問。
あなたが回復に向かうためには、一体家で私の役割はどうあるべきと。」

男性「それは本にも書いてあるけど…」

母親「ええ、言ってください。」

男性「安心感を与える。で、共感すると。」

母親「共感とか安心感なんか、悪いけど、私の得意分野じゃない。(得意分野よ、と肯定の意味)」

男性「私が感じてない以上は、それは失敗してるっていうことですよ。」

母親「ああそうだね、ほんとだね、笑っちゃうね。」

 

とてもゆったりと優しい声色でお話しするお母さんと、物静かな男性の似た者親子。
男性が話してる最中にお母さんが何度も感情的に口を出しますが、慣れているからなのか、声を荒ららげることもありません。

人前で否定され、「ダメ」「バカ」と言われても言葉では怒りません。
でも、母親が自分を信用せず、管理したがっていて、自分は変わるつもりがないこと、協力すると見せかけて脅していることを見抜いています。

お互いが0か100になって譲れないので、問題が並行線のまま長引いているようです。
ひきこもりが、当事者だけではなくて、家族の問題だということがよく表れた会話だと思いました。


家族支援カウンセラーとしての観点から言うならば、このご家庭は典型的なST気質家族と言っていいと思います。

ひきこもりの状態を直すとか改善するとかの以前に、自分たちをちょっと変わってるけど、真面目に生きてるST(スペシャルタレント)気質と認められたら、内にたまった怒りも溶けて、生きづらさも少し楽になっていくのではないかなぁと思ってしまいます…。


このお母さん、息子さんがいないところでインタビュアーにこう話していました。

「私も人の子なので、心の闇の中に入っちゃう。
何度か思ったことありますね。
「ああ、もうダメ、この人と一緒に死のう」とか、楽になるだろうなっていうのはありますよね。
だから、そういう怖さはある。
でも母親ですから産んだ責任もあるわけだし、最後まで私は彼と共に生きることを考えていますね。」


息子さん自身は、もしかしたらこのセリフはインタビュー当日ではなく、番組の放送を見て知ったかもしれません。
苦しいのは本人だけではありません。
だからこそ、家族丸ごとの支援が必要なのです。


放送を見て、その後、親子に何か変化はあったかしら?
二人の治療がうまく進んでいることを願うばかりです。


番組は2018年のものですから、NHKには追跡取材してもらいたいと、個人的には思ってしまいました。


ということで、今回の記事はここまでです。
最後までお読みくださりありがとうございました😌