思春期ブルー相談室ブログ

家族支援カウンセラー海野しぶきによる不登校・ひきこもりの解説と、わが家の話

過保護と過干渉について 5

過保護の実践  静編

前回は、子どもからの「要求」に対して「過保護」にするにはどうしたらいいかを書きました。
「要求」といっても、比較的わかりやすい「動的な要求」についてでしたね。
 

ssbluesoudan.hatenablog.com

 


しかし、不登校で引きこもりがちな子どもとの生活では、「無言」とか「無反応」「無視」でしか表現されない「静的な要求」も結構あると思います。

例えば子どもが「できないこと」「やれないこと」。
小さいコトから大きなコトまで、様々なやれないことが毎日何度も起きますね。

起きられない
食べられない
着替えられない
お風呂に入れない
歯磨きできない
片付けられない
学校に行けない
外出できない
意思表示できない

これらが良くないことは、すでに子どもも知っているんです。
やれたら、とっくにやっています。
やりたくてもできないほど、心のエネルギーが低下しているのです。

だいたい、親が話しかけただけで元気が出たり、やる気が出るような簡単な子どもだったら、そもそも不登校にはなりません。
この子たちは、特別な子「スペシャルタレント」なのです。
子どもは、自分の命を守るために不登校になっていることを、親はしっかり認識しないとなりません。

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では「できないこと」に対する親の対応はどうするかとというと、結局は子どもを「信じて」、「任せる」ことに行き着きます。

やるかやらないかは、子どもの判断。
ただ、できなくてフリーズしている場合は「無言で要求」していると察するのです。

(放っておいて。)
(こんな状態で行けるわけないでしょ。)
(動きたくても動けないの。)

この辺までは見れば大体わかることだと思いますが、その先にある気持ちを汲み取るのです。

(今はどうしてもできないから、あとはお願い。)
と言いたいのだ、と。

つまり「察する過保護さ」が必要なのです。

親は、できないことの理由を察して、自分なりに納得できれば、落ち着いて「過保護にサポート」する気持ちになれます。
「過干渉」な上から目線の思いと、混同してはいけません。

私の場合は、察してみようという気持ちになれたら、不安や怒り、疑問の感情はスーッと引いていきました。
例えば、お風呂に入れない、歯が磨けないのも、
(やるにはものすごくエネルギーがいることだから、今はできないんだ。)
と納得できれば、無理にやらせようと考えなくなります。

また、朝起きず、学校に行けない娘の「無言の要求」を察して、時間が来たら学校に欠席連絡を入れるのです。
予約した病院に行けない時も同じ。

ここで、かつてのクセが出てきて、上から目線の
(やってあげたのに。)
(昨日は行くって言ってたのに。)
という気持ちになってしまったら、それは「過干渉」。
やるべきだ、行くべきだ、という親の価値観の押し付けです。
あくまでも親のやることは「過保護なサポート」なのです。

やれないことの代表「片付け」は、ST気質ならではの特徴ですから、「意図的にやらないのではなく、する能力がない」と理解します。
そして、無理矢理やらせたり、やるまで放っておくのではなく、親が、自分が気持ち良く暮らすために片付ければいいのです。

子どもも、親のサポートで普段から片付いた清潔な部屋で暮らしていれば、その気持ち良さは身に付くので、いずれ自分なりに工夫できるようになるそうです。

困り感を察し、その対処法を編み出していくサポートを

過干渉な親というのは、「子どもがこれをできるようにならないと、将来自立できなくて困る」と思いがちですね。
でも、“将来”ではなくて、“今”困っていることに目を向けてください。
不登校やひきこもりになっている子は、“今”困っているんですから、その困り感を解消しないと、将来もずっと困ったことへの対処法がわからないままになってしまいます。
“今”どうしたら困らずに快適でいられるかを考え、家族で工夫していきましょう。

わが家の娘は外(学校)で頑張っていた分、家ではずっとイライラと爆発している子でしたが、「過干渉」をやめて「過保護」にするようにしたら、娘の方からフゲフゲ言いながら私に近寄って来て、ハグを求めることが多くなりました。

前の私だったら、
「大丈夫、大丈夫。」「頑張って!」「やればできるよ。」
とか言ってたと思いますが、これは親の期待がこもった言葉なのでNGワード。
「期待」は今の子どもを否定しているから生まれる感情なので、自己否定の強い思春期ブルーの子にとっては毒にしかならないんですね。(ノーマルな子に期待するのとは次元の違う話です。)

今の私は、娘の求めに応じてそっと抱きしめますが、その理由を聞き出したり、励ましたり、アドバイスはしません。
どちらかというと今の状況を分析する感じ。
「なんか困ってるみたいね。初めて行く所だから緊張してるかな?何か手伝えることがあったら教えてね。」
と、これくらいで留めておきます。

娘は、私にフゲフゲを言葉にされ、それを受けて自分の言葉で説明し、その上でやるかやらないかを決めるようになりました。
たとえやらない方を選んでも、私がそれを尊重すると、その後を機嫌良く過ごせます。
こうして私は、やっと娘にとって適当なサポートができるようになったわけです。

私たち親は、いつでもあなたのサポーターですよ、というメッセージ(言葉とは限りません)を伝え続けることで、子どもの無言の要求にも応じやすくなるのです。

  • 子どもが苦手としているところは補う。
  • その独特なペースを尊重する。
  • 本人がやりたいと思ったことには反対しない。
  • たとえ失敗しても口出ししない。
  • 本人の動揺による「悪態」は必ず付いてくる付録と理解する。
  • 本人からヘルプの申し出があれば、こちらは多少無理してでもサポートする。

こうして家族が一つのチームとなり、困り感を一つずつクリアしていこうという目的が持てれば、たとえ不登校は続いていたとしても穏やかな生活が始まりますよ。

そしてこの方法は、子ども自身が自分の気質を理解し、うまく対応しようと工夫する力を身に付けることにつながるので、家庭の中でソーシャルスキルレーニング(SST)をしていることにもなっています。

私が思春期ブルー相談室で提唱している「過保護」とは、ST(スペシャルタレント)気質の子が広い意味で「生きる力を身につけるためのサポート」でもあるんです。